モビールを贈ろう
1.はじめに
㊗大学時代のサークルの同期夫婦に子供が生まれたらしい。
そこで、サークル同期でお祝いを贈ろうという話になり、とある1人が言った。「俺らものづくりサークルだったじゃん?普通に送るのもつまらんから、何か皆で作ろうぜ」などと。仕方がない、なんか面白そうだとも思ったので、皆で何を送るか考えた。その結果、モビール(ベビーベッドとかに取り付けて、人形とかを吊り下げてくるくる回るアレ)を贈ろう、ということになった。
この話をするまで知らなかったのだが、モビールとはただのおもちゃではなく、赤ちゃんの目が見え始めた時期に、動きや色、形を認識することで色彩感覚と空間認識能力を養う役目を果たしているのだそう。詳しいところは専門的な文書をあたっていただくとして、このページでは製作したモビールと、それを贈った結果について、徒然なるままに書いていきます。
2.コンセプト設計
まずはどんなコンセプトのものを作ろうか?ということから考えた。モビールの役割と、サークルのノリを掛け合わせることで、下記のようなことが要件となった。
・カラフルなこと
・複雑な動きをすること
・みんなで贈った感を出す
・構造はカーボンであること(夫婦はサークル時代カーボンを扱う班だったため)
構造は自分が作り、吊るすものは他の有志の皆で作るということにした。
構造様式としては、複雑な動きをする方が面白いし発育上も宜しいということなので、なるべく自由度の高い(可動部の多い)構造を採用することとした。
次に吊るし方を考える。
事前に父親に聞いたところ、どうやらベビーベッドではなく、布団に寝かせるとのこと。発育としては、ベビーベッドよりも自由に動けていいらしい。下記URLの先人が、吊るし方を色々考えていただいている。布団を使うということであれば、屋内鉄棒を使うのがちょうど良さそう。少し大きくなってからは運動させるのに使えるし。
3.製作
3.1.構造
構造はカーボンだが、固いし端部は鋭利なので、安全対策は特に気を遣う。端部には緩衝材として発泡スチロールをエポキシで固定し、凧糸は結び目を複数設けて最後に接着固定した。また、500 mlペットボトルを用いて荷重試験を行った。別にこんなに重いものは吊るす予定にないし、衝撃荷重も特に加わらないが、これだけ安全に見て置けばまあ強度不足による落下はまずないだろう。接着など、物と物の接合部から破損することがあるため、特に注意する。
3.2.吊るすもの
年始にサークルOB同期の何人かで集まって作った。
生まれたのは女の子なので、花やモールでお姫様感を出した。また、野菜や果物をたくさん食べるようにと、フェルトでそれらも作った。…いや、シナモンとかサンリオキャラがいるね(手作りだっつってんだろ)。色々カオスだけど、いい感じにまとまってきた不思議。無機質なカーボンだけの構造から、悪くない感じなってきた。
3.3.電装類
「できれば自動で回したいよね」とか宣う人がいたので、自分もなんか回したくなってきた。何なら、回っている最中に音楽も流したくなってきた。
なので、簡単な電装部品を追加して作った。モータはタミヤの減速ギア付きモータ、音楽は電子オルゴールの「きらきら星」にした。
動作音的に音楽を流そうとしたが、電子オルゴールの音がトラウマになる可能性に配慮し、急遽、音楽スイッチは回転スイッチと別に設けた。
回路は小学生でもわかる簡単な直流電源とスイッチの回路。これがモータとオルゴールで並列になっているだけ。電子工作初心者なので、こんな簡単なものでも、ちゃんと描いて確認しないと平気でショート回路を作ってしまう。
ここまでやったら、スイッチを入れて問題なく動作することを確認する。
最後に構造材をモータシャフトの先に取り付けて、動作確認をする(下記動画)。問題なく回っていますね。思ったよりモータ動作音がオルゴールに対して大きいなという感想。モータ音とちゃっちい電子オルゴールが何とも言えないハーモニーを生んでおり、楽しいと取るか不気味と取るかは人に依るんではないかな?(次からオルゴールは物理的なものにして、モータ回転と連動するようにしよう…。)ともあれ、無事に狙い通りの動作が確認できたので個人的には満足。
3.4.予算
今回かかった予算を参考までに示します。
鉄棒はオプション。構造としてはカーボンが一番高かった(これは完全なる内輪ネタなので、真っ先に削れる予算と思う。普通に木材やプラでいい。)。
皆で割れば大したことない額になった。
4.ユーザーの反応
「…なんだこれは?」
この世に生を受けて間もないというのに、こんなハイコンテクストな物体を見せられては、もう唖然とするしかない。しかし両親曰く、モータによる回転と不規則な動きが相まって、かなり興奮してくれたらしい。いや、とても可愛い。
5. まとめ
ということで、サークル同期でプレゼントを作って贈った。
中々に癖の強いものを押し付けた感があったけど、喜んで使ってくれているようで安心した。
今回のような、手作りの贈り物というのは、自己満と他人に寄り添う絶妙な距離感を探る行為であり、まじめに考えると結構慎重になるものと思う(手がかかっていたり、知り合いに貰ったりすると中々捨て難かったりするからね)。まあ、使わなくなったら捨ててもらっていいのだけど。
余談ながら、研究開発といった仕事を生業としている自分は、普段は顧客から「ありがとう」と言われる類のものづくりをしない。感謝されるものというのは、わかりやすい価値を既に生んでいるから。それゆえ、技術的にはかなり蓋然性のあるもので、特に最新技術でもないし高度なこともやっていないケースが殆どとなる。今回も、やっていることは小学生の電子工作と、ちょっとした木工やカーボンの加工であり、一つ一つの作業は子供でもそう難しくはない。だが、必要な機能を最小限に詰め、あとは贈り先を考えてちょっとした気遣いや遊び心を入れるとか、そういうところに価値があるようなものづくりも、普段の仕事や趣味とは違った面白さがあるなあ、と感じた。
なんか、そんな難しい話をするつもりは無かったのだが、まじめに考えてしまった。
皆で作ると、どうまとまるのかわからない感じが良いね。同じ環境で過ごした人たちでコンテクストが共有されていれば、何となくいい感じに収まっていくというのも、上手く出せた作品に仕上がったと思う。
ということで、生誕おめでとうございます。たくさん野菜と果物食べてください。
レーザーカッターでペン立てを作る
せっかくレーザーカッターを買ったので、シナ板を使ってペン立てを作ってみました。
作ったのはもはや1年以上前の話ですが、気軽にできる工作ネタとして作り方を書いていきます。
レーザーカッターの試運転や、長期休みの学校の宿題などの参考になれば幸いです。
レーザーカッターを導入した際の記事は、下記リンクで簡単にメモっています。
設計
まず、完成形をイメージしてポンチ絵を描いていきます。
何種類か描いてみたり、描いているうちにイメージが湧いてくることもあるので、まずはテキトーな裏紙でも良いので好きに描いていきます。
この時は、既に何となくイメージはあったのであっさりしていますが…。高さの寸法値が変に中途半端ですが、取り出しやすく、かつペンが倒れない、ちょうど良い高さとなるよう多少こだわりました。背の低い方には、はさみやスティックのりなどもちょうど収納できるようなイメージです。
下の2つの四角は実際の寸法です。ペンをはめてみたりして、サイズ感を確認していきます。
図面作成
次に、カット用の線を描いていきます。
下図はAutoCADで描いていますが、フリーのCADでも、ペイントでも、Power Pointでも、長さを指定して線が描けるツールであれば何でもいいと思います。最後にはdxfやpngなどの拡張子に変換して使用します。
カット
書いた図面をdxfファイルに変換して、SmartDIYsCreatorに取り込みます。
また同時に、ペン立ての表面に刻印を入れていきます。これも画像ファイルをドラッグ&ドロップし、木材をカットし切らないようレーザーの強さや速度、回数を調節することで実現できます。正直、直線カットだけなら手で切ることもできます(むしろその方が早い)が、この刻印で遊べることがレーザーカットのメリットの1つですね。
刻印用の画像は、テナーサックスのフリー画像を探していましたが、どうやらこれはアルトサックスだったようです(後日発覚。わかる人は一目でわかる)。その右の絵は皆さんご存知、デルタ翼の前縁から放出される剥離渦の可視化画像です(これは普通わからん)。
カットの設定やノウハウについて、下記に羅列します。
- レーザーのパラメータは、カットする箇所でスピード400, 24回、刻印箇所でスピード1600, 1回、強度はすべて100%とした。
- カット箇所は特に回数を多く設定したが、すべて切れなかった。
- 2mm厚のシナベニヤでもきれいにカットできた実績はあるので、恐らく焦点距離が遠かったと思われる(焦点距離をミスると何回切っても意味がない。セッティングの感度はかなりシビアなのである程度は試行回数増やして慣れるしかない)。
- PCがスリープになるとシーケンスが中断され無限に切る(危険)ため、カット中は、スリープと画面ロックの設定を切るべし。
ニス塗
仕上げにニスを塗っていきます。ニス塗りなんぞ中学校の机の落書きを落として仕上げに使って以来でした…いやニス塗り楽しいよニス塗り。勉強や社会に疲れた人はみんなニス塗りやってみよう。
下記URL先を参考にしつつ作業を進めました。
塗って→乾燥させて→軽くサンディング(やすりがけ)→また塗って→乾燥させて…というのを3回繰り返します。
ニスは油性の無色透明のものを選び、乾燥具合に応じて薄め液を使って粘度を調節していきます。裏面は後で木工用ボンド使って接着するため、ニスは塗りません。
組み立て
木工用ボンドを使って組み立てていきます。流石のレーザーカット、精度は良好なので安心して組み立てられます。
サンディング
多少やすったとは言え、ニスを塗ったまんまでは厚さにムラがあり、光に照らすと一目でモコモコだとわかります。
ラストに、仕上げのマジやすりをかましていきます。
紙やすりをやすりブロックに巻き付け、やすりがけ(サンディング)していきます。
水研ぎ用のサンドペーパーを使用したので、研いでは流し、研いでは流し…を繰り返します。
思えば学生時代からやすってばっかだ。しかしながら、光を当て視覚・触覚を研ぎ澄まし凹凸を無くしてゆく時間は心も穏やかになり、浮世を忘れて没頭できる。きっとあらゆる雑念が削ぎ落されるはずだ(?)。
完成
…と、努力の甲斐もあり、ニスの面は残りつつ、つるっとした表面になります。
表面ボコボコしていたときと同じように光に当てると、違いは一目瞭然です。
自分の納得いった時点で完成です!
このペン立てはプレゼントとして人にあげましたが、今でも現役バリバリで使われています。
今回は簡単な形にしましたが、引き出しを設けたり、節点作ってギミックにしてみたりと、色々なアイデアは考えられます。線図さえ引ければどんな形でも簡単に切れてしまうので、また気晴らしに他の木工でもやってみようと思います。
それでは。
2021年 作ったものまとめ
2021年ももう間もなく終わりを迎えるということで、個人、集団含め、有形無形問わず自分が作ったと思うものをまとめます。
ソーラー飛行機S-1~S-4
今年の製作時間はほとんどこれに費やしたと言えます。写真を見返すと、ちゃんと性能計算したのが今年の1~2月で、今では当たり前に飛行試験をガンガンやれて、推進系やシステム類の性能値を実測値で議論できるレベルになっていることを考えると、とても前進しているのではないかと感じます。一人で作れるものや、出来ることも増えてきたように思います。
今はまだ4時間程度の飛行が最高記録にはなりますが、来年には目標である24時間飛行を達成できるよう進捗していきたいです。
また、このプロジェクトについてはHPで別途公開しているので、良ければそちらも生暖かい目で見ていただけると幸いです。日本の若手工学者が、飛行機を設計開発する場を作ろうともがいています。
utsunomiyasolarplane.weebly.com
鳥人間滑空機のコックピットフレーム
鳥人間コンテスト滑空機部門への出場を目的としている、チームあざみ野関係の製作物です。
twitter.com
暇すぎる新入社員研修の時に、パイプ断面の曲面の計算と図面作成をしていた頃から考えると、着想から完成まで実に3年近くかかっています。ここ数年コンテストへの出場が叶っていないとはいえ、かなりのスローペースですね。過去の出場時に課題であった操舵系統の検討はこれからのため、2022年出場に向け、製作ペースを上げていきたいです。
ソーラー飛行機 クラウドファンディング
145万円の目標金額を掲げて、結果として集まったのは65万円。目標金額には未達でしたが、これだけの支援が得られたことは素直に感謝申し上げたいです。本当にありがたいことでした。
camp-fire.jp
一方で、内訳を見るとほとんどメンバーの知り合いといった構成になっているため、広く訴求力のある内容ではなかったということを痛感しています。もっと魅力的な内容となると同時に、訴求力のある伝え方ができるよう精進していきたい。そんな反省が出る取り組みだったように思っています。
その他
簡単な加工を行ったものとしては、モニターアームの取付金具を削って机に取り付けたり、ハンドランチグライダーのノーズを修理したりと、細かなDIY的なこともやっていました。
あとは、趣味・仕事を合わせて国内の学会投稿が2件ありました。
まとめ
こうして見てみると、個人で作ったものがほぼ無いな、という印象。
仕事以外では、ほとんどソーラー飛行機のプロジェクトで手一杯だったと思います。それだけ頑張っていた証ではあるとは思うものの、一方で、自分の処理能力の低さを痛感しています。
このブログも、月一更新は最低目標として掲げていたものの、蓋を開けてみれば2件しか更新していない…。
自分は、自分の製作物で語ってこそ、自分を一番表現できる人間だと思っているので、もっと作ったもので表現できるよう、友達に生存報告する感覚で気軽に発信していこうと思います。それでは、良いお年を(もうあけおめの時間帯になってしまった)。
【飛行力学】参考文献まとめ
鳥人間を3年弱
航空専攻の大学院に2年
航空機メーカーR&D部門3年目
若輩者の私自身が勉強や実務に用いている、主に航空機設計および空気力学に関する特に参考となる書籍をリストにして、ブックレビュー的に紹介します。ラジコン機、鳥人間の滑空機から実機までと、個人的な幅広いニーズを包含しているのでやや混乱するやもしれませんが、ご了承ください。
なお、このページは今後また更新していく、かもしれません。
学習の習熟度に応じて初学向け、中級向け、上級向け、と分けてみました。
航空機設計
Aircraft Design (Daniel P. Raymer)
【中級向け】
通称”レイマー”。世界にその名が轟く航空機設計のバイブル。 分厚いし1万円程度する洋書であるため、なかなか手が出ないが、設計の初期段階で色々仮定をしつつ数字を決めていく作業(いわゆる概念設計)において様々な指針を与えてくれます。
翼、舵面の大きさの決定、重量・慣性モーメント推定、性能(フライトエンベロープ、旋回性能、上昇性能など)の推算・・・と、幅広い内容を含む。空気力学の項はほぼDATCOMの計算方法と同じ。
巻末の手書きの計算過程を追っていくと、実際の概念設計作業の手順が終えるので、設計チュートリアルとしておすすめです。
Fundamentals of Aircraft and Airship Design (Leiland M. Nicolai, Grant E. Carichner)
【中級向け】
似た機種の空力係数や、重量情報を拾ったり、あとは離着陸距離の簡易推算法など、Raymerでは包含していない内容がカバーされており、たまに読みたくなります。
航空力学の基礎(牧野光雄)
【中級向け】
通称「銀本」。飛行機の設計に関して、抑えておくべき基本的な内容が多く書かれています。ただし、翼理論に関する説明がやたら詳細であったり、式の導出が結構すっ飛ばされていたりと、初学で通読するにはつらいかもしれません。
航空力学の教科書として広く浸透していますが、鳥人間や軽飛行機の設計入門としては後述の「飛行力学の実際」や「航空工学概説」を個人的にはおすすめします。
飛行力学の実際(内藤子生)
【初学向け】
富士重工T-1、FA-200の設計者である内藤先生の著書。
上記に挙げた機体規模のような単座・複座の小型機に特化した内容と見られるが、こちらも飛行機設計論同様、実設計にそのまま使える具体的な内容が豊富。ドラッグポーラーの簡易推算法、安定性要件を満たす形状トレンド、避けるべき急所となるようなポイント…など。
学者が体系的にまとめた教科書というよりも、実際のエンジニアが記した研究成果といったところか。文面に力強さを感じる。
新品ではもうあまり出回っていないというのが難点ではありますが、模型飛行機から小型有人機まで、設計書の入門としては最適と思います。
飛行機設計論(山名正夫, 中口博)
【上級向け】
「設計論」と謳うとおり、実務的な数値を出すことに重きを置いている(私は頭がそんなに良くないので、こういう具体的な話から入る方が好みではある)。各章の説明が丁寧であり、情報量が多い。そしてポエムもある。
各所設計値の大まかな目安についても記載が多いため、実用的(飛行機の設計では多くの場合、似た機体の統計値に寄せてパラメータを設定します)。
現在絶版であるというのが痛いが、理工書のある図書館や航空図書館でぜひ一読はしておきたい。
航空工学概説(村山尭)
【初学向け】
文量はそれほど多くなく、翼の話から飛行機の安定、性能計算まで、浅く広く必要なことが網羅されています。装備品の章があるのが特徴的ですが、防衛大学校教員が書かれたものというのだから成程頷ける。
こちらも中古本しか出回っていないのが難点ですが、理工系の本が置いてある図書館あたりで、初学に目を通しておくと良いと思います。
図解入門 よくわかる航空力学の基本(飯野明)
【初学向け】
上記のやつ、全部難しそうって方は、まずこれから読むと良い。
物理を習った高校生が読んでも、割とスッと入ってくる程度のレベル感です。雑学として「飛行機のことを知りたい!」というニーズに合致すると思います。
模型飛行機と帆の科学(東昭)
【初学向け】
身近な例から、飛行力学を理解するならばこの本が良い。ペーパープレーンや模型飛行機などのクラスでは、重心セッティングがやや実機と異なったり、凧の力学が航空工学で理解できたりと、このページで紹介している書籍とは違ったテイストでとても面白いです。
空気力学
空気力学の基礎
【中級向け】
2016年に発売したAnderson先生の和訳版。
空気力学を包括的に学ぶ上では、式展開などが丁寧で、練習問題も豊富なのでおすすめです。等エントロピーの物性値なども巻末に掲載されているので、実用上も重宝します。
ただし、めちゃくちゃでかい&重いので、持ち運びに向かないのが難点。
Fluid Dynamic Drag(Sighard F. Hoerner)
【上級向け】
通称”ホエルナー”。空気力学の黎明期に、数ある実験データや理論を1つの冊子に”Drag”というテーマでまとめ上げたすごい本。ざくっと抗力を見積もりたいときや、オーダー感を知りたいとき、またはちょっとした突起物などのミスレニアス抗力を算出したい際に便利です。
著作権が切れているため?リンク先でpdfを無料ダウンロードできます。
Fluid Dynamic Lift(Sighard F. Hoerner)
【上級向け】
Hoerner先生の"Lift"版。これの出版の前に著者は亡くなられたそう。本書の内容はは、”Drag”に比べてぼちぼち出回っているような印象なので、”Drag”ほど読まないかもしれません。私が活用しきれていないだけでしょうか。
Theory of Wing Sections (Ira H. Abbott, Albert E. Von Doenhoff)
【上級向け】
NASAの研究者がまとめた翼型についての本。翼型について体系的に知れる本としては、これと「翼型学(西山哲男、日刊工業新聞社)」あたりでしょうか。よく使われる翼型の、レイノルズ数や速度による違い(模型飛行機、軽飛行機、遷音速、超音速など)、特性による違い(層流系、失速特性など)、系譜の違い(RAF、Göttingen、Eppler、NACA)等々、奥が深い…あるいは、沼か。
余談ですが、飛行機設計において翼型の開発から入るというのは、かなり本気度が高いです(生半可な努力では、これまで使われている翼型性能を超えることは難しい)。必要がない限りは、求める性能に近い翼型を使用するか、ブレンドする程度にとどめるのが、工数的に無難と言えます。
飛行力学
航空機力学入門(加藤寛一郎, 大屋昭男, 柄沢研治)
【上級向け】
安定微係数の推算方法、飛行機の運動方程式について詳しく記載されています。これを理解すれば、鳥人間滑空機の飛行シミュレーションが可能となる。
非常にマセマティカルであり、飛行機の基本動作などがある程度わかっている状態で読まないと難しい。
航空機の飛行力学と制御(片柳亮二)
【上級向け】
元三菱重工の制御設計者が書く、飛行機の制御系の極・零点、根軌跡など、安定性についての本。飛行機の安定と言うと、機体自体の自律安定(静安定)と、操舵系も含めた動安定の2種類を指すことがあるが、本書は後者の動安定に関する話題に特化しています。
ここまで読めると、いよいよ昨今の現代制御マシマシな飛行機設計の足掛かりが掴めると思います。現代の飛行機は制御なしには語れず、無人機は言わずもがな、有人機に対してもあらゆる操縦を補助する制御が入っています(自動車の直進安定、パワステ、デファレンシャル、ABSなどのイメージ)。これに加え、人間が操縦する並みの判断力を持ちうる最適制御・経路生成や複数機の同時制御など、更に高度化・広範囲化していっています。
構造設計
飛行機の構造設計(鳥飼鶴雄, 久世紳二)
【初学向け】
実際の航空機構造の絵や説明が豊富。まずこれを読まずして構造は始まらないという感じです。航空機の構造部材の名前も多く記載されているため、初学者にもお勧めできます。
航空機構造 -軽量構造の基礎理論-(David J. Peerry 著, 滝敏美 訳)
【中級向け】
著者前書きより、「学部学生や現場の技術者が侵す重大な誤りの多くは、単純な力の釣り合い式を適用する際の誤りに起因している」。・・・耳が痛い。
また、同業の構造設計を専門とする先輩曰く、「構造は価値を生まないが、構造がないと価値を生まない」とのこと。軽量構造設計の例題が豊富なので、時間を取ってやってみたい(私はまだやってない)。
グラフの体裁を一発で整えるExcelマクロ
趣味や仕事の関係上、散布図を作る機会が多く、Excelで散布図を作るたびに体裁を整える(色を変えたり、凡例を付けたり、タイトルを消したり、軸ラベルを付けたり…)のが煩わしく感じていました。
今回は、そんな作業をVBAで処理できるようにしたので、本記事で紹介します。
記事の下部にコードを載せているので、ご自由にお使いください。
プログラムの中身に関するご質問には答えたり答えなかったりしますが、これを使用したことによって生じた問題については一切の責任を負いませんので予めご了承ください。
機能
下の動画のように、グラフをアクティブにし、マクロを実行するとあらかじめ設定していた体裁の散布図になる(マクロ実行は0:08~0:10)。
資料等に転載する際に大概必要となる、体裁や大きさをポチポチ整える作業を短縮できる。
グラフの体裁(凡例とか軸ラベルとかマーカーとか色とか)をワンタッチで整えるマクロ作ったった pic.twitter.com/YagkqpEy5o
— RyotaF (@fukuchanz40) March 3, 2021
使い方
グラフをクリック(アクティブに)して、マクロを実行する。
※あらかじめショートカットを登録しておくと楽。例えばCtrl+gとか(”グラフ”の”g”)。
プログラムの概要
変数"cht"に現在アクティブなグラフの名称を収納
→"cht"のチャートタイプを選択(折れ線付き散布図)
→グラフタイトルと外枠を消し、軸ラベルを追加
→.SeriesCollection.Countプロパティで系列の数を拾う
→それぞれの系列の色やプロットの形を設定する
→凡例の書式を設定
→グラフの大きさを拾う
基本的には全部ググって実装した。
VBA初心者である私が苦労した点は、アクティブなグラフ情報を拾う機能をどうVBAで書くかという点。
結果的に、アクティブなグラフ情報を拾う方法は、Yahoo知恵袋の素晴らしいアドバイスよりアイデアを拝借。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1139015571
FABOOL Laser Miniを導入した
昨今では、10万円前後でレーザーカッターも購入できるようになってきました。しかも、国内製品で。
ということで、SMART DIYsのFABOOL Laser Miniの60×42を導入しました。
中華製のレーザーカッターで、アルミを切断できるものを探したのですが、調べた範囲では業務用の高価&巨大サイズしかなかったので、今回の選択に至りました。
組立て
組み立てに関しては、SMART DIYsホームページのマニュアルを見れば問題ないはず。手順ごと懇切丁寧に解説されています。
届いた状態。
組み立てたものがこちら。
使用感
・レーザーの音はとても静か。TVやドライヤーの音の方がよっぽどうるさい。
・煙は割と出る(もやがかる、煙たい)。排気ファンを買うのも予算とスペースが許せば手だが、私の部屋はとても狭いので換気で対応。1晩経てばそれなりに復旧する。
加工設定データ集(※随時更新していきます)
自身の加工ノウハウや設定集は、随時ここに更新していこうと思います。
下記、先人諸兄姉の外部リンク集です。
- FABOOLシリーズで主要素材の切断検証を行いました!(2019.10.1)https://www.smartdiys.com/blog/cutting-validation/
- 実践パラメータについて(2018.2.12)https://forum.smartdiys.com/t/topic/53
- FABOOL Laser Mini 3.5W (カットパラメータ模索編)(カットパラメータ調整用SVGデータ公開あり)(2016.8.26)https://kitto-yakudatsu.com/archives/580
PC組んだ
7年前に購入したDynabook KIRA君が、使用中頻繁にファンを暴走させるようになってきた。OSも更新され、近年のソフトのメモリ負荷に耐えられなくなってきているのを感じたため、PCを更新することにした。
新調するにあたり、いわゆる自作PCと呼ばれるものをやってみた。
組み方やパーツ単体の性能などは既に多くの方が丁寧に紹介していると思うので、ここでは組み合わせと予算、使用感をお伝えします。
使用目的
まず目的があって、必要なスペック(仕様)が決まります。
少し話は逸れますが、最近ではスマホの性能と利便性が向上したことから、PCを持たない若者が増えているらしいですね(リンク先p.5)。
https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h30/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf
ネット検索や動画視聴が目的であれば、わざわざ携行性の悪いPC、ましてや据え置き型の自作PCなど持つ必要が無いのでしょう。これはもっともなことと思います。
私自身も、上記の目的であればタブレットが最適だと思っています(5~6インチのスマホ画面よりかは大きい方が良いかな…)。
さて、今回PCを組むにあたり、主な使用目的は
- 文書作成
- 写真のRAW現像、閲覧(フルサイズなのもあり重い…)
- ゲーム
- ネット
- 動画編集
- CAD作業(2D、3D)
- 数値計算(将来的に)
です。用途に趣味が多分に含まれるため、もう生活のインフラに近いです。
6や2があることから、そこそこ高性能なGPUが要求されます。
2や7はCPU依存度が高い。また、GPUの性能が良くても、CPUとバランスを取らないと描画速度はそこまで上がらないのでCPUも高性能寄りです。
写真や動画、ゲームなど重いデータを扱うことから、SSDも必須。
あとは趣味と予算のトレードを考えてなんやかんや決めました!
パーツ一覧
部品 | 製品 | 購入価格(税込) |
---|---|---|
電源 | 玄人志向 80+ ブロンズ 650W | ¥7,760 |
CPU | intel Core i7-9700K | ¥45,527 |
GPU | MSI GeForce GTX1660Ti | ¥28,800 |
メモリ | Team DDR 8GB ×2 | ¥6,980 |
ストレージ | SunDisk SSD 500GB | ¥8,484 |
サブストレージ | BarraCuda HDD 4TB SATA 6.0GB/s | ¥8,573 |
マザーボード | MSI Z390-A Pro | ¥11,518 |
CPUクーラー | 虎徹 Mark-Ⅱ | ¥4,480 |
ケース | Thermaltake CS6813 | ¥7,682 |
OS | Windows10 Home | ¥16,400 |
合計 | ¥146,204 |
-
CPUはAMDと迷いましたが、何となく昔から「Celeron~i7の中で、なんかi7ってハイエンドっぽい…!」という物欲が私の中でふつふつとあったのか、その欲求を満たす意味でインテルにしました。要するに好み。
- 3Dモデリングやゲームが目的に入っているので、ハイエンドのRTXという選択肢もありましたが、現状RTXのパフォーマンスを生かし切れていないものも未だ多いという話を聞いたので、保守的にGTXシリーズを選定。
- ケースでかすぎた感もあるが、拡張性を考えるとまあアリかも。
ちなみに、「自分で組むとお得にハイスペックPCが組めるのか?」という点については、確かにこれらのクラスでBTOの相場は16万くらいでした。安いといえば安いですが、サポートの有無・組む手間等を考えると、趣味と思ってやらないとやはりやっていられないですね。「お得に物を手にしたい」とは需要が少々違う感じです。
↑完成品がこちら。
画像右上のスペースが特にスッカスカですね。冷えていいのかもしれないけど。
空気の流れとしては、画面右側から吸気して、左上の虎徹くんを経由しつつ廃棄されるという感じ。虎徹くんはマザーボードから鉛直方向を軸として90°回転が可能なので、ケース内の配置に合わせて空気の流れを管理できます。
あんまりビカビカ光りすぎるパーツ構成でもないし、ケースファンくらいは光らせといてやってもいいかな。。ちょっと光ってる分にはかっこいいし。
使用感
概して本当に快適。
とりあえず、ネットや動画見てる程度ではファンはまったくもって静か。写真をRAW現像しているときでも、ファン回転数は上がるもののほぼ音は聞こえない。
FPS等のゲームやってるとPC周辺の温度が上がるのを感じるが、騒音や動作パフォーマンスは気にならない。
さすがSSDということで、立ち上がりもPCロック画面まで10秒以内、ロックを解除してから1秒程度で操作可能の状態になる。
・CPUベンチマーク(CINEBENCH R20)
CPU性能を測ってみました。
まあ、スコアは巷で言われている性能が出ていますね、はい。という感じ。
そこで以前のノートPCのCPUと比較してみるちょっと面白い。以前のも特段性能をケチったわけではないのですが、7年も経つとCPU性能は変わりますね…。いちいちファンが暴走するわけです。
上が今回、下が以前のPC。
https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/cinbenc/
・写真現像時間
こちらもCPU依存の作業。
上が以前のノートPC、下が今回のもの。
速すぎる pic.twitter.com/1XhIe0XAPn
— Ryota F. (@fukuchanz40) June 8, 2020
雲泥の差。ただし、どちらも動作中はCPU使用率が100%となるため、並列作業をしていると動作が遅くなる可能性があります。
・GPUベンチマーク(FF15ベンチマーク)
FF15をやる分には「とても快適」だそうです(笑)
何がどう快適やねん感あるので、公式の指標を下に貼っておきます。
とりあえず、通常の画質で3Dゲームをするには余裕を持ってプレイできそう。
おそらくノートPCではFF15は起動できないんじゃないかと思って、こちらはノートPCとの比較データはありません。
http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/
・SSDベンチマーク(CrystalDiskMark 7.0.0)
こちらも読み込み・書き出し共に概ねカタログ値通りの性能が出ているようです。
以前のノートPCとの比較もしています。上が今回、下が以前の。
https://crystalmark.info/ja/software/crystaldiskmark/
結果、SSDに関してはほぼ同じ性能でした。
確かにノートPCの方も起動が早くデータのやり取りでフラストレーションを感じたことはほぼありませんでした。一応、当時の高速SSD128GBを搭載している割と良さげなノートPCですからねっ(突然の養護)。
(しかも13.3型の画面にWQHD画質+タッチパネル搭載…当時PCに詳しくなかった頃、同級生に「俺が選んでやるよ」って言われて選んでもらった。本当に良いやつ選んでもらったんだなあ)
・総合ベンチマーク(PC Mark 10)
最後に、文書作成から動画、3Dグラフィックまで様々な項目をテストして、PCの総合的な性能を測ってくれるPC Mark 10というソフトを使います。
スコアは大まかに総合点、Essensials、Productivity、Digital Content Creationの4種が出ます。最も負荷がかかるデジタルコンテンツ関係のソフトの快適性を測るDigital Content Creationも、問題のない範囲でした。
時間がかかる(20分ほど)ので今回のPCのみやりましたが、指標で言うと「最新のゲーミングPC程度」といった感じでした。
https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/pcmark/
まとめ
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この構成の良い点
・相場以下の15万円程度の価格で、家庭用PCのハイエンドと言えるものに近い性能を得られる。
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この構成の注意点
・光学ドライブは付いていない。
・SDカード挿入口忘れてた。
・無線LANもなし。
・4K画質でゲームしたいとか、そういう用途ではGPUはRadeonやRTXの方が良いかも。
光学ドライブについては、PS4を持っている場合、Blu-rayの再生等が可能なので特に支障はなさそうです。
SDは少々面倒…カメラで撮った写真を取り込む際は、内蔵型かUSB外付けのを買う必要アリです…。
無線LANは付けませんでした。理由は部屋が狭く、LANケーブルの配線がそこまで手間ではないということと、通信速度と安定性を優先させたかったからです。
また、4K画質ともなれば、GPUとCPU性能に不満を覚えるかもしれません。あくまで今回の構成はフルHDのディスプレイと組み合わせるつもりで組んでいます。